狼母さんと2匹の子山羊

軽度知的障害児と、そのお姉ちゃんの育児記録。

妊娠中のこと 10

お腹の中で順調に育っていくヨウと、毎日私のお腹に向かって

「お外に出てきたら一緒にあしょぼーね」

と話しかけるメイ。


メイには、私のお腹の中には赤ちゃんがいて、もうすぐお外に出てくるから、そうしたら3人で一緒に遊ぼうね。といつも話していました。


なので、メイもヨウが産まれてくるのを楽しみにしている様子でした。



子供たちが元気に育っていく一方で、この頃には夫婦関係は手の施しようがないところまできていました。


私は精神的にとても不安定になっていて、自殺願望がものすごく出てきていて、


このままでは、突発的に本当に死んでしまうかもしれない


とすごく恐くなり、ある日、身の周りの物を纏めて、メイを連れて実家へ帰りました。



出産予定日まで、あと3ヶ月くらいの頃だと思います。


その後、私は産後3ヶ月まで、半年間を実家で過ごしました。

妊娠中のこと 9

「胎児精査を受けてみませんか?」

先生から提案がありました。



胎児精査というのは、通常の妊婦健診とは別に、もっと精度の高い超音波機器を使って、お腹の中の赤ちゃんの内臓や脳に異常がないか調べる検査です。


妊娠中期と後期の2回受けることができて、私は2回とも受けることにしました。



妊婦健診とは別の部屋で、大きな超音波機器。


映る画像は、いつも健診の時に見ているものとは違って、とても細やかなものでした。


時間をかけて、先生方が臓器、骨、脳の状態をみてくださいました。


臓器はもちろん、指の本数や、背骨の長さを計ったり、特に脳はすごく丁寧に診られていました。


結果はどこにも異常が見つからず、


この頃にはヨウの頸の後ろの浮腫もほとんど目立たなくなっていました。



そして病院に行く度、先生や看護師さんが、今の週数だとどの臓器が作られているかお話してくださいました。


今もし出産になっても、助かる率が高いですから。でも、赤ちゃんの身体のためには、もう少しお腹にいた方がいいね。もうすぐだね。


優しい声掛けがとてもありがたく、毎回励みになっていました。

妊娠中のこと 8

次の診察の時、羊水検査を担当してくださった先生から、改めて説明を聞きました。


検査結果として渡されたのは、生物の教科書で見たことのある、2対の染色体異常46本の写真。


あと、「軽微なモザイク型も含めて、染色体異常が見つからなかった」という旨の文書も同封されていました。


性別は男の子。



先生は、恐る恐る

「人工妊娠中絶についてですが、中絶できるのは21週6日までです。もし中絶されるのでしたら、病院側の準備もあるので、早急に決めなくちゃいけません。どうしますか?」

と聞いてきました。


私は「産みます!」と、はっきり答えました。


先生が、明らかにホッとしたのがわかりました。


その後、こないだの電話と同じように、先生から今回わからなかった染色体異常である可能性があること、他の病気かもしれないこと、出産に至らないかもしれないことを聞きました。


私は

「検査結果で何も異常が出ていないのに、お腹の赤ちゃんを堕ろすことはできません。


産んだ後に病気があるかもしれないのは、どの赤ちゃんも同じはずです。


もし健康に産まれても、自閉症はある程度の年齢にならないと判らないと聞いていますし、成長してから病気になったり、事故で身体が不自由になる可能性だってある。


言い出したらきりがないと思います。」


とお伝えしました。


言い終わった後、先生の顔を見ると、ニコニコしていました。

「そうですね。産まれたら、きっと可愛いと思います」



私の気持ちは、もう出産に向けて動いていました。